
座礁した「エヴァギブン」
総トン数219,076トン、 全長400m のマンモスタンカ−ばりのコンテナ船「エヴァ−ギブン」がスエズ運河で座礁し運河の通航を妨げて物流に大きな影響を与えています。 写真のように見事に運河を塞いでいます。 スエズ運河は400mの幅は無いのかと分かります。 かって日本の建設業者が運河幅の拡張工事を成功させたとの記事が想いだされました。
老生は世界一周航路のバラ積み船に乗っていたことがあります。日本−豪州−喜望峰−欧州−米国−パナマ運河−日本を3か月の航海で石炭を運んでいました。 パナマックスという種類の船でパナマ運河を通航できる最大の船です。 そこでは左右の幅は30cm位のスキマしかなかった記憶が。 従い今までの船乗りでスエズ運河を通航した経験はありません。 また、欧州間のコンテナフィ−ダ−輸送、つまり小口で各港をまわり集荷してロッテルダムやブレ−メンハ−フェンの大型コンテナヤ−ドに運ぶ5000トン程度のコンテナ船に乗ったことががあります。
モーリシャスで座礁漏油事故をおこした船も日本船主でしたが、今回も今治造船系の正栄汽船がオーナ−で船籍はパナマ、運航は台湾系のエヴァ−グリ−ンです。 便宜置籍船に問題があったのでしょうか? 乗組員がWiFiwを使いたいために、故意に幅寄せしたのではなかろう。 砂嵐による視界不良と強風により、船体が横向きとなったと報道されている。 もちろんパイロットは乗船していたと思われる。 15隻のコンボイ(船団)の5隻目であったとも報じられています。 他の14隻はどのように影響したのでしょうか? 今後の報道が待たれる。
小生も恥ずかしながら先に述べた欧州でのコンテナ船の航海士として乗船中に、英国フォ−クストン出港の際に強風の横風を受けて操船が満足にできずに隣の小型船に接触した事故を起こしたことがある。自船のレーダ−マストを曲げてしまった。 この時はオーナ−は米国人、船籍はパナマ、乗組員は全員日本人であった。 船長はタグボ−トを要求せずに遠慮したのも原因のひとつであろう。今までの日本船の経験ではタグなしの出港離岸はない。 経費節約のための外人の要求に船長は判断を誤った。 船首にはバウスラスタ−が付いており、それは横へ水流を出すことにより船首の方向を変える装置である。 この事故の原因は、それを装備していたが、強い横風では思うようにその効果が減じられて船首が曲げ切らずに隣船に接触したということだ。 コンテナ船は在来船よりも横風の影響を受けやすい。 自船はデッキ上にコンテナ4段積みであったが「エヴァ−ギブン」は写真から数えてみるとデキ上にコンテナ10段積みのようである。 4000mの長さにこのコンテナ高さだけでも掛ければ膨大な風圧面積になろう。
コンボイは一定の速度を保って(おそらく12ノット)15隻が同速で航行するので、この船は20ノットの高速で走行できる能力を持つが速度を上げて舵効きをよくすることもできずに押し流されたのであろう。 コンテナ船の巨大化もこの事故でブレ−キがかかるのではなかろうか。 経済効率の追求も思わぬところで見直されることになる。いつも事故が無ければ見直しはないのであるが。 同様に自動車専用船の横面積は巨大であるが、コンテナほどの仕向け地向けのロッドが大きくないのであろう、コンテナ船ほどの巨大化は避けられている。
2021-3-27